自閉性障害の患者のシナプス接着蛋白SynCAM/RA175(Cadm1)遺伝子に2つの変異を同定し(2009)。細胞培養系を用いた実験では変異Cadm1は小胞体に蓄積し、小胞体ストレスを誘導し、神経細胞のデンドライト形成を抑制する(2010)。Cadm1-KOマウスは不安、攻撃性の増大する他、小脳に軽い発達異常が見られること、また、ヒト言語障害に対応する超音波コミュニケーション障害が存在すること、またマウス小脳では、Cadm1はGABAB2受容体と小脳プルキンエ細胞とParallelファイバーとのシナプスに局在した(2012)。Cadm1-複合体の分離およびCadm1のPDZ結合モチーフに結合するScaffold蛋白を解析したところ、Mupp1と結合する一方、NeuroliginはMupp1と結合しないことから、NeuroliginとCadm1は異なったシナプス複合体を形成していると考えられた。また、Cadm1-KOマウスではGABAB2受容体のレベルが増大していることを明らかにした(2012)。一方、実験計画に従い、正常および変異Cadm1-MycTagを導入したROSA26遺伝子のBacクロンに-Cadm1-Mycを挿入し、ROSA26-Cadm1-Myc-BacTgトランスジェニックマウスを作製したが、正常および変異Cadm1分子が脳内で切断されており、Myc抗体を用いて解析することが困難であり、そこで、CADM1(Y251S)KIマウスを作製中であり、Cadm1-KOマウス、CADM1(Y251S)KIマウスを用いてLoss-of-functionとGain-of-functionの両面からASDの分子病態の解析を行うことにした。
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