研究課題
最終年度ではHtrA2ノックアウト(KO)マウスの病理学的解析をさらに進め、(1)残存線条体ニューロンの細胞質にユビキチン陽性蛋白が蓄積し、autophagyのmarkerであるLC3の免疫反応が増強、(2)黒質を含めその他の部位は異常なし、(3)骨格筋・心筋の萎縮、を明らかにした。さらに、(4)western blot解析によりHtrA2 KOマウス脳ではautophagy活性化のmarkerであるLC3-IIが増加し、(5)HtrA2 KOとParkin KOの掛け合わせマウスではHtrA2 KOマウスより生存日数が10日短縮することを明らかにした。研究期間全体を通じてわれわれは、(1)HtrA2 KOマウスを作製し、このマウスでは(2)生後14日目から体重増加が見られず、生後30日で死亡、(3)線条体ニューロンが脱落し、残存ニューロンの細胞質にユビキチン陽性蛋白が蓄積し、autophagyが亢進、(4)ミトコンドリア呼吸鎖複合体IVのサブユニットCOX IおよびCOXIVの低下、(5)Parkinタンパク量の低下、(6)LC3-IIの増加、(7)中枢神経では線条体以外の部位に変性なし、(8)骨格筋・心筋の萎縮、を明らかにした。これらの結果から、HtrA2 KOマウスではHtrA2の基質であるPOLGの機能が障害され、ミトコンドリアDNAの発現が障害されることによりCOXI・COXIVが低下してミトコンドリア機能が障害され、線条体や心筋・骨格筋障害が生じると考えられた。さらにわれわれは、(9)HtrA2 KOマウスをParkin KOマウスと掛け合わせたdouble KOマウスはHtrA2 KOマウスよりも寿命が短縮することを明らかにした。これは、doubleKOマウスではHtrA2KOマウスで蓄積した異常ミトコンドリアを、parkin欠損のために除去できず、細胞死が促進されたと考えられる。すなわちこの結果は、parkinが異常ミトコンドリアのmitophagyに関与していることをin vivo実験系で明らかにした初めての成果である。さらにわれわれは、アルツハイマー病の特徴的病理所見である老人斑と神経原線維変化にHtrA2免疫反応が見られること、脳幹型および皮質型Lewy小体においてXIAPとHtrA2が共存していることを明らかにし、アルツハイマー病、パーキンソン病、Lewy小体型認知症の病因にHtrA2が関与している可能性を指摘した。
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