研究概要 |
目的:昨年度に引き続き、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭葉変性症(FTLD-U)のユビキチン化封入体の主要構成蛋白であるTAR DNA-binding protein 43kDa(TDP-43)の存在を、愛知医科大学加齢医科学研究所にあるALS~FTLD-Uの連続剖検例にTDP-43免疫染色を施行し、封入体の有無、形態、分布、タイプを検討した。 結果:19例を解析した。臨床診断は孤発性ALS14例、家族性ALS1例、ALS-D~FTLDが4例、平均死亡時年齢は67.9±10.6歳(45~81歳)、男女比は11:8、平均罹病期間は38.6±27.4ヶ月(6-96ヶ月)であった。19例中17例はTDP-43 proteinopathyをした。家族性ALS1例はFUS陽性封入体を示しTDP-43は陰性であった。臨床診断FTLDの1例は、病理学的にはアルツハイマー病があった。他のALS-D~FTLDが3例は全例前頭側頭葉の変性とTDP-43陽性NCIを伴いtype2と考えられた。孤発性ALS14例はすべてTDP-43 proteinopathyを示し、脊髄の封入体は全例でskein-like inclusions, round inclusionを認めた。また臨床的に認知症が観察されなかったALS5例にも病理学的には辺縁系を主体に少数のTDP-43陽性NCIを認めtype2の変化を認めた。 考察と結論:TDP-43 proteinopathyを示すALS~FTLDは19例中17例89%であることが判明した。また孤発性ALSの約30%に辺縁系にTDP-43陽性所見を認めた。以上の所見から、ALS、ALS-D, FTLD-UにおけるTDP-43 proteinopathyの頻度は高く、TDP-43封入体の形成機序を視点に入れた病態解明や治療戦略の開発が重要であると考えられた。
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