研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の関連遺伝子としてTDP-43,FUSが知られている.一方,ALSを含む神経変性疾患全般において,プロテアソームやエンドソーム,オートファジーによる蛋白分解系が凝集体形成や細胞死に深く関わっていることが示唆されており,蛋白分解系の異常がALSの発症に影響を与えていると想定される.本研究では,正常および変異TDP-43,FUS組換えアデノウイルス,およびプロテアソーム,オートファジーに対するshRNAを発現する組換えアデノウイルスを成体ラット顔面神経核運動ニューロンに遺伝子導入し,凝集体形成の有無を解析した.ヒト正常およびQ343R,G298S,G294A,A315T変異TDP-43またはC末断片(208-414)TDP-43,正常およびR521G,R521C,R522G,P525L変異FUSをDsRed発現ベクターにクローニング,またプロテアソーム(PSMC1),オートファジー(ATG5)に対するshRNAをEGFP発現ベクターにクローニングし,それぞれ精製組換えアデノウイルスを作製,成体ラット顔面神経に単独または混合して感染接種した.その結果,注入軸索からのTDP-43,FUS組換えウイルスの逆行輸送により顔面神経核運動ニューロンの核・胞体にDsRedおよびTDP-43,FUSの強い発現を認めた.これらTDP-43,FUS組換えウイルスと,プロテアソーム(PSMC1)またはオートファジー(ATG5)に対するshRNA/EGFP発現組換えウイルスを共感染させることにより,一部の運動ニューロン胞体に凝集体の形成が認められた.以上から,成体ラット運動ニューロンにおけるTDP-43,FUSの凝集体形成はプロテアソームまたはオートファジーの阻害により促進されると考えられた.この系を用いて変異TDP-43,FUSによる運動ニューロン変性や封入体形成の関連,細胞死の有無を検討している
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