研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)において,プロテアソームやESCRT,オートファジーによる蛋白分解系の障害が凝集体形成や細胞死に深く関わっていることが示唆されており,またALSの関連遺伝子としてTDP-43,FUS,VCP,UBQLN2など様々なものが知られている.本研究では,蛋白分解系に対するshRNAおよび正常・変異TDP-43,FUSを発現する組換えアデノウイルスを作製し,培養ニューロンや成体ラット運動ニューロンに単独または共発現させ,凝集体を形成させる実験系を確立した.ヒト正常および変異TDP-43またはC末断片TDP-43,正常および変異FUSを発現する組換えアデノウイルス,およびプロテアソーム(PSMC1),エンドソーム(VPS24など),オートファジー(ATG5など)に対するshRNAを発現する組換えアデノウイルスをそれぞれ作製し,マウスES細胞由来分化運動ニューロン,ラット神経幹細胞由来ニューロン・グリア培養系,および成体ラット顔面神経に単独または混合して感染接種した.組換えウイルスは上記培養細胞系ではほぼ100%の感染発現効率を示し,TDP-43,FUS/DsRedとPSMC1,ATG5 shRNA/EGFP組換えウイルスの共感染により凝集体形成を認めた.成体ラットでは,注入軸索からの組換えウイルスの逆行輸送により顔面神経核運動ニューロンの核・胞体に導入遺伝子の強い発現を認め,TDP-43,FUS/DsRedとPSMC1,VPS24,ATG5 shRNA/EGFP組換えウイルスの共感染により運動ニューロン細胞体に凝集体の形成が認められた.運動ニューロンにおけるTDP-43,FUSの凝集体形成はプロテアソームまたはオートファジーの阻害により促進されると考えられた.現在,VCP,UBQLN2に関しても組換えウイルスを作製し検討中である.
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