焦点切除部に様々な程度の鉄沈着を認めることがある。これらの所見がどのようなメカニズムによって発症および難治化に関連しているか否かを検証するため、鉄沈着様式と神経可塑性異常について免疫組織学的に検討した。検体はいずれも焦点切除した大脳皮質で、外傷後遺症5例、海綿状血管腫7例、表層性ジデローシス3例、原因不明の皮質内鉄沈着2例。ベルリン青染色の他、GFAP、EAAT2、AQP4、synaptophysin、neurofilament、MAP-2、CRMP-2、Arcadlin、Arc、Rheb、GLUT3、に対する抗体を用いた免疫染色を施し定性的に評価した。病変は境界が不明瞭な連続性を持った2つのタイプに分けられた;塊状のヘモジデリン沈着、グリオーシス、アストロサイトの異常構造物foamy spheroid bodyが多数出現する領域(reactive zone)、および微細な鉄陽性顆粒がニューロピルに散在あるいはアストロサイトに取り込まれている領域(minimal zone)。Reactive zoneではアストロサイトのGFAP表出増加・EAAT2表出低下、神経細胞の細胞骨格・シナプス蛋白の表出低下がみられ、一方、minimal zoneでは微細な鉄顆粒を含むアストロサイトにおいて、GFAP表出は変化なくEAAT2表出低下・AQP4表出増強、血管壁Glut3表出低下を認めた。一部の検体でArcadlin、Arcの神経細胞内表出の増加を認めた。両zoneともに共通するEAAT2表出低下はアストロサイトのグルタミン酸リサイクルの不全による神経細胞の機能異常の存在がてんかん原性に関与していると推測された。Minmal zoneでのAQP4とGLUT3の表出パタンは血液脳関門の破綻の存在を示唆しているが、てんかんとの関連は不明であった。 また、てんかん原性脳形成異常の代表である限局性皮質異形成の国際的な診断基準を国際抗てんかん連盟のNeuropathology Task Forceの一環として提唱し共同発表した。その基準作りのための免疫染色を施し、科学的根拠の検証を遂行した。
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