本研究では、γセクレターゼのAβ分子種切断制御因子を探索するために、架橋処理した活性型γセクレターゼを、ラフト画分より精製して解析する計画である。本年度は、架橋剤処理条件と処理後の活性型γセクレターゼ複合体の精製法について詳細な検討を行い、架橋したγセクレターゼ複合体が精製できる可能性を見出すことができた。 架橋剤は、DSPとホルムアルデヒドの2種類を用いた。それぞれの架橋剤について、処理するタイミング、濃度、処理時間等の検討を行い、処理条件を決定した。DSPで架橋した場合には、プレセニリン抗体およびPen-2抗体で反応する高分子量複合体の形成が確認できたが、免疫沈降法によりこの複合体を単離することができなかった。ホルムアルデヒドの場合は、細胞を直接処理した時に、少なくともPen-2とニカストリンを含む高分子量の架橋複合体が形成されていることが分かった。このことは、サンプルの加熱処理によりPen-2およびニカストリン単量体が増加することから明らかになった。この架橋方法では、処理後のタンパク質抽出効率が非常に低下したが、中程度の強さで架橋処理を行うこと、抽出に可溶化力が比較的高い溶液を用いることで、ある程度改善することができた。複合体は、全膜画分とラフト画分の両方から検出され、Pen-2抗体では免疫沈降できなかったが、ニカストリン抗体により免疫沈降された。現在、複合体自体を検出するために、Blue native PAGEなど、より高分子量のタンパク質を解析する手法を用いて検討を行っている。
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