本年度は昨年度までの研究結果を基に、γセクレターゼ複合体の精製と構成因子の同定を行なった。 野生型マウス繊維芽細胞を4%ホルムアルデヒドで架橋処理した後、ラフト画分および全膜画分を調製した。コントロールにはプレセニリン欠損マウス繊維芽細胞を用いた。各膜画分からγセクレターゼを抽出しBlue native PAGEを用いて解析した結果、全膜画分のγセクレターゼは架橋剤で処理しても分子量が変化しないのに対し、ラフト画分のγセクレターゼは架橋剤処理により分子量が約240kDaから約480kDaに変化することが分かった。このことは、ラフト画分γセクレターゼに架橋剤処理が有効に働いていることを示す。また、Blue native PAGEでの分離後にゲルを切り出しSDS-PAGEでさらに展開することにより、この複合体中にはγセクレターゼの構成因子であるニカストリン、プレセニリン、Pen-2が含まれていることが分かった。そこで次に、ラフト画分からRIPAを用いてγセクレターゼを抽出し、抗ニカストリン抗体を用いて免疫沈降した後にBlue native PAGEで解析した。しかしながら、この操作により得られるγセクレターゼの量が著しく減少した。その原因がBlue native PAGEの際の操作過程にあることが判明したため、当初の計画を変更し、免疫沈降後の精製γセクレターゼを酸性溶液で容出し、LC-MS/MSにより直接解析することにした。また、免疫沈降に用いる抗ニカストリン抗体は磁気ビーズに結合させ架橋試薬で固定した。ラフト画分より抗ニカストリン抗体を用いて免疫沈降したγセクレターゼ複合体を酸性溶液で抽出し、トリプシンによる消化処理を行なった。得られた消化産物をL-MS/MSを用いて分離し、各ピークの質量解析を行なった。現在、構成因子同定のために得られたデータの解析を行なっている。
|