1.メチルドナー欠之食による脳内DNAメチル化変化のもたらす行動変化とその基礎的基盤について 出生後に受けるメチル化変化を制限するために、メチル化反応に使われるメチルドナー(メチオニン、コリン、葉酸)を欠乏させた食事をマウス生後3-6週に与えて(メチルドナー欠乏群)、発達期=小児期にDNAメチル化変化をもたらされるモデルとして使用した。このメチルドナー欠乏群が、欠乏食終了後すぐ(生後6週)と、成長後(生後12週)の恐怖や不安反応に普通食群との変化をもたらすかを、昨年度から継続して、恐怖と不安を測定する実験パラダイムを用いて検討した。その結果、不安を測定するOpen field試験では6週令時には差がないが、12週令時には欠乏食群で、移動距離に差があった。高架式十字迷路では、6週時には不安がなく、12週時には不安が強い結果であった。恐怖条件付け後の消去時には、どちらの週令時にも恐怖消去が遅れる結果であった。その背景にはNMDA受容体NR2Bサブユニットの海馬における発現の差があると考えられる結果も得た。 2. 人における古典的恐怖条件付けと恐怖消去によって変化する聴性誘発電位P50の変化について。 健常者において、安全でない信号条件で、P50抑制が弱まる一方で、安全条件ではそのような変化が見られなかったことにより、恐怖条件付けと恐怖消去において、P50抑制の変化(=感覚ゲート機構の変化)は、信号の性質(安全か危険かによって異なり、危険であると判断されるような状態ではP50抑制率が弱まることが、恐怖や不安の獲得に役割を果たしていることがうかがえた。これに関して、International Journal of Psychophysiology誌に投稿し、アクセプトされた。
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