研究概要 |
1.平成22年度までの研究によって、海馬CA3特異的Munc18-1遺伝子欠損するマウス(γICre/+,Munc18-1^<flox/flox>)では生後1週以降はほぼCA3の錐体細胞に限局してMunc18-1遺伝子を欠損するが、生後2週ではすでにCA3錐体細胞の大部分が脱落しており、生後1週間でも、CA3の錐体細胞の一部に変性が見られることが明らかになった。これはMunc18-1タンパク質の欠損に起因するアポトーシス誘導作用が生後すみやかに起こることを示している。残念ながら脳部位特異的欠損マウスにおいても、この作用を回避できず、神経伝達物質放出を調べることが困難であった。 2.上記と同様に海馬CA3特異的にトモシン1遺伝子を欠損するマウスを作製して、シナプス伝達を解析した。Shaffer側枝-CA1錐体細胞間での興奮性シナプス電位は増大の傾向が見られたがpaired pulse facilitation、連続神経刺激に対するシナプス電位の時間経過等において有意差はなかった。また、海馬歯状回苔状繊維-CA3錐体細胞間のシナプス伝達においても刺激時間の増加に伴う興奮性シナプス電位は欠損マウスにおいて増大していたが、paired pulse facilitationでは大きな変化は見られなかった。 3.私たちはすでにサイトゾルタンパク質シナフィン(別名コンプレキシン)がシナプス小胞開口放出のCaセンサーシナプトタグミン(Syt1)と直接結合することを証明し、シナフィンがSyt1をSNARE複合体に動員することを示唆している。今回、この二つにタンパク質間の結合が、シナフィンのC末端部分を介しており、この結合がPC12細胞での有芯小胞開口放出に重要であることを示唆する結果を得た。
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