グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)発現誘導機構の解明:ラットグリオーマ由来C6細胞を用いGDNFの発現誘導機構を解析した結果、フェニルチオシクロペンテノン化合物のGIF-0643によるGDNF発現誘導はアクチノマイシンDにより完全に抑制されることから転写レベルで調節されることが明らかとなった。申請者らは昨年度までに、フェニルチオシクロペンテノン化合物がPPARγに結合し、RXRと異種二量体を形成することによりPPARγ経路を活性化することを明らかにした。しかし、PPARγアゴニストのトログルタゾンはGDNFの発現を誘導せず、PPARγアンタゴニストはGIF-0643によるGDNF産生促進に影響を与えなかった。この結果からフェニルチオシクロペンテノン化合物によるGDNF産生促進にはPPARγ経路は関与しないことが示唆された。一方、GIF-0643によるGDNF産生促進はdominant-negative Nrf2の過剰発現により抑制されたことから、抗酸化応答配列に結合する転写因子のNrf2が関与することが示唆された。 フェニルチオシクロペンテノン化合物のin vivoにおける有効性の検討:GIF-0643はマウスの腹腔内投与により脳の神経栄養因子の発現に影響しなかった。GIF-0643のリード化合物であるNEPP11は腹腔内投与により標的遺伝子のひとつであるヘムオキシゲナーゼ-1の発現を誘導することが報告されている。しかし、NEPP11は腹腔内投与によりin vivoで神経栄養因子の産生に影響しなかった。
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