神経細胞特異的セリン・スレオニンキナーゼCyclin-dependent kinase 5(Cdk5)の機能を、活性化サブユニットp35のコンディショナルノックアウト(KO)のマウスを作製し、空間学習課題や恐怖条件付け課題などの行動解析、電気生理学的解析、生化学的解析を行なう事で明らかにする事を本研究の目的とした。本研究ではp35遺伝子座に2つのloxPを挿入したマウス(p35-floxマウス)を作成した。脳形成が終了してからp35遺伝子を破壊するために、タモキシフェン(TM)でCre活性を誘導できるCreERマウスと交配して、誘導型p35コンディショナルKOを作成した。2mg TMの経口投与3日間連続でp35の80%以上の量的低下が確認された。また、生後約3週の海馬CA1特異的にCreが発見するCaMKII-Creマウスとの交配で、CA1特異的p35コンディショナルKOを作成し、Cre発現後にp35タンパク質量が海馬で低下していることが確認できた。これらのp35コンディショナルKOについて、現在行動解析を行なっている。CA1特異的p35コンディショナルKOマウスにおいては、海馬CA1錐体神経細胞のスパイン数の減少が観察されている。また、アルツハイマー病(AD)のモデルマウスに対するp35の関与は、先行研究として行なったp35KOマウスとの交配でAD病態が悪化する結果を得ており、詳細を検討中である。
|