研究概要 |
近年、数の認知に関する細胞活動での研究は前頭前野、頭頂葉において主に研究されている。例えば、申請者らは、自らが行う運動回数のカウンティングに頭頂皮質が関与していることを明らかにした(Sawamura, Shima & Tanji, Nature 2002, J.Neurophysiol.2010)。一方、スクリーンに呈示されたシンボルの数を認知する課題でNiederらは前頭前野の細胞活動を調べ、数の認識に前頭前野が関与していることが示されている。申請者らはサルが連続動作課題をあらかじめ決められた試行回数でのスケジュールで遂行している時の細胞活動を検討した結果、前補足運動野において、バイナリー符号化様式で行動の試行回数をモニターしていることを示唆する細胞活動があることを示した。興味ある事は、それらの細胞の半数は一連の運動シークエンスの奇数回数の試行時に活動し、残りの半数は偶数回数の試行時に活動を示すことを明らかにした。このような細胞活動はコンピューターなど二進法カウンティング機器で広く使われている動作原理と似ている(Shima & Tanji, J.Neurosci.2006)。この細胞活動は前補足運動野において数多く認められたが、補足運動野および一次運動野ではほとんど見られなく、前補足運動野が試行回数の認知に関与していることを示した。これまでの数の認知に関する研究は、主に視覚情報に基づいて数の大小についての判定を行わせる課題がほとんどであるが、ここで申請者が計画しているような、経時的に呈示された事象の数が脳のどの部位で、どのような神経機構で認知されるのかは全く解明されてない。申請者は前頭葉、頭頂葉を主たる研究対象部位としてこのプロジェクトを推進している。研究では、まず外界に呈示された視覚刺激の数の認知が脳のどの部位でどのような神経活動により支えられているのかを行動学的解析から明らかにする。日本サルにカウンティング課題を学習させ、大脳前頭葉、すなわち前頭前野、運動前野および補足運動野から細胞活動記録を行うと同時に、数の認知に関するサルの認知行動データの解析を行なった。
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