研究課題
これまでに、様々な種の動物において近似的に数の認識や簡単な計算が可能であることが報告されており、人間を含む動物は種を超えた共通の数の認知機構(近似的数表現)を所持していることが近年、唱えられている。また、動物の多くの種において、棒や石などの簡単な道具の使用が可能であるが、動物が数のような高次の認知的対象を道具により操作したという報告は未だないのが問題点である。この問題点を解決するために、我々はサルに対して数的操作を行なう道具を導入し、行動心理学的に検証した。方法として、数的道具は左右の操作子からなり、それぞれの道具を操作することによりコンピューター画面上の視覚対象の個数の増減が可能である。左右の道具と個数の増減の関係は一定試行数ごとに変換した。これらの道具により、(1)指示された数的操作を道具により行なう課題(指示課題)、(2)目標とする数まで与えられた数を道具により操作する課題(目標試行的課題)を2頭のサルに訓練した。行動解析の結果、指示課題、目標指向的課題におけるサルの正解率はそれぞれ96%、77%とチャンスレベルより優位に高かった。また、数以外の視覚的特徴(面積、密度、配列等)を変えても正解率は変化しなかった。目標指向的課題におけるサルの数の選択率は数が大きくなる程、正解率が低くなる近似的な結果を示した。左右の道具と数的操作の関係を逆転するとサルは報酬を減ずることなく、操作結果から道具を切り変え目的とする数に近づく正しい操作を行うことができた。さらに、左右の道具と数的操作の関係を逆転した後、他方の課題に変更した際、道具と数的操作の関係は他の課題に伝播した。今回の実験において、サルは数的操作を行なう目的で目標指向的に道具を使用できることが明らかとなり、その行動は状況に即した臨機応変な行動であった。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
Int.Conf.Cog.Neuro.
巻: 3(印刷中)
日本神経回路学会誌
巻: 18 ページ: 129-134
Front.Comput.Neurosci.
巻: 5 ページ: 1-11
PMID:21734877