麻酔・非動化したネコの外側膝状体(LGN)より単一ニューロン活動を記録し、正弦波状に輝度変化するグレーティングの円形パッチを刺激として受容野内外に呈示した。グレーティングパッチのサイズ、コントラスト、グレーティング方位、空間周波数、時間周波数は可変とし、刺激はドリフト呈示または静止呈示した。一部の実験では多連管微小電極を用いて、記録ニューロンに対し、抑制性伝達物質GABAの受容体拮抗薬であるビククリンをイオン泳動投与することにより、LGN内抑制を遮断したときの効果を観察した。 LGNニューロンの受容野刺激に対する応答は、受容野周囲に呈示したグレーティング刺激により抑制性の修飾を受けた。この短潜時の周囲抑制は受容野周囲の狭い範囲(2度程度)を刺激することにより最大効果を生じた。LGN内抑制をビククリン局所投与により遮断すると周囲抑制は弱まりフィードフォワードメカニズムに加えて、視床内抑制が貢献していることが明らかになった。 また、刺激方位選択性はこれまで大脳皮質において形成されると考えられてきたが、LGNニューロンにおいて最適空間周波数より高い空間周波数をもち受容野より大きなグレーティングで刺激すると90%以上のサンプルで有意な方位チューニングが出現することを見出した。この方位選択性はV1内で形成される性質とされてきたコントラスト非依存性も示す。LGN内のGABA抑制をブロックする実験を行ったところ、高コントラスト刺激に対する反応の方位チューニングが有意に弱まった。これらの結果は、LGNのレベルで、フィードフォワード入力と受容野周囲抑制に関連したGABA抑制の寄与を受けてコントラスト非依存的な方位チューニングが形成されており、これがV1において更に強化されていくことを示唆する。
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