麻酔・非動化したネコの網膜、外側膝状体、一次視覚野においてニューロン活動を記録し、グレーティング刺激やノイズ刺激を用いた逆相関法による受容野および反応の計測を行った。その結果、外側膝状体(LGN)や網膜神経節細胞(RGC)においても刺激方位や空間周波数にチューニングした受容野周囲抑制があることを見出した。RGCやLGNの受容野は真円ではなく楕円形であり、さらにその周囲に受容野外抑制野(周辺抑制野)が広がっていた。このような受容野構造のためにRGCでもLGNでもニューロン応答に方位バイアスが観察され、受容野の長軸の傾きがそのニューロンにとっての適当方位となっていた。ネコの受容野のアスペクト比はRGC1.43、LGN1.62、V1単純型細胞(4層)1.2-5.5(Alonso et al.2001)、V1単純型細胞(全体平均)1.7-12(Jones & Palmer 1987)と次第に大きくなり、方位選択性が次第に強まっていくことと対応するが、加えて非線形な受容野周囲抑制の貢献もあると考えられる。これらは初期視覚系のステージ間でフィードフォワード的な神経結合の収束及び発散によって受容野構造と受容野特性が形成されていくメカニズムについて定量的なデータとなる。さらに、皮質内結合、高次領野からのフィードバック結合によって、より合目的的な反応特性が構築されていると考えられる。
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