研究課題/領域番号 |
21500370
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
熊本 栄一 佐賀大学, 医学部, 教授 (60136603)
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研究分担者 |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 准教授 (70336139)
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キーワード | ガラニン / 脊髄後角 / パッチクランプ法 / ラット / 痛覚情報伝達 / 興奮性シナプス伝達 / 抑制性シナプス伝達 / ガラニン受容体 |
研究概要 |
皮膚末梢に与えられた痛み刺激は1次感覚ニューロンのAδ線維やC線維により脊髄後角に伝えられるが、脊髄後角の第II層(膠様質)は、その痛み伝達の制御に重要な役割を果たすと考えられている。脊髄腔内へ投与したガラニンが濃度に依存して痛み行動を二相性に制御することはよく知られているが、そのシナプスレベル機序はまだ十分に明らかにされていない。当該年度では、成熟雄性ラット脊髄横断スライス標本の膠様質ニューロンヘブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用し、ガラニンがAδ線維やC線維の刺激による単シナプス性の興奮性シナプス伝達、また、抑制性シナプス伝達に及ぼす作用を調べた。シナプス後細胞における外向き膜電流を抑制した条件下で、ガラニン(0.1μM)がAδ線維やC線維の刺激により誘起される単シナプス性のEPSCに及ぼす作用を調べた。調べた約90%のニューロンでAδ線維誘起EPSCの振幅は約40%減少し、調べた約67%のニューロンでC線維誘起EPSCの振幅は約20%減少した。残りのニューロンではEPSC振幅は変化しなかった。同様な作用はガラニン受容体(GalR)-2/3作動薬galanin2-11によりみられたが、GalR-1作動薬M617ではみられなかった。GABAやグリシンを介する自発性の抑制性シナプス後電流(IPSC)の振幅と発生頻度、さらに局所電気刺激により誘起されるIPSCの振幅はガラニン(0.1μM)により影響を受けなかった。以上より、ガラニンはAδ線維やC線維の中枢端に存在するGalR-2/3を活性化してグルタミン酸放出を抑制し、Aδ線維での作用はC線維での作用より強いことも明らかになった。これらの興奮性シナプス伝達抑制は、ガラニンによる痛み行動の二相性変化に寄与することが示唆される。
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