|
本研究では、高次脳における時間情報処理機構の解明と、その処理における感覚モダリティの特異性を明らかにする目的で、視覚刺激と聴覚刺激を用いた時間弁別課題を遂行できるようにサルを訓練し、課題遂行中にサルの前頭連合野と線条体から、多点電極を用いて複数の神経細胞活動を同時に記録することを計画している。
本年度は、まず、視覚刺激と聴覚刺激を用いた時間弁別課題の制御システムを整備した。時間弁別課題課題では、遅延期間をはさんで呈示時間の異なる視覚刺激あるいは聴覚刺激(C1とC2)をサルに呈示し、どちらの刺激が長く呈示されたかをサルに弁別させた。刺激の呈示時間は0.2～1.8秒間(02秒間隔)の間で適宜定め、C1とC2の長短の順序や視覚刺激と聴覚刺激の組み合わせはランダムに定めた。制御システムを整備後、2頭のサルの訓練を開始した。
続いて課題を十分に遂行できるようになった1頭のサルで、前頭連合野から単一神経細胞活動の記録実験を開始した。現在のところ、およそ200個の神経細胞から活動を記録した。課題関連活動を概観してみると、予想以上に、視覚刺激のみに、あるいは聴覚刺激のみに応答している神経細胞が見いだされた。この結果は、時間情報処理に関して、前頭連合野においても視覚刺激と聴覚刺激とを別々に処理している可能性を示唆する。今後、さらに多くの神経細胞活動を記録し、詳細な解析を進めていく予定である。
また、前頭連合野と線条体から多点電極を用いて複数の神経細胞活動を記録するためのセットアップを進めている。
|
