研究課題
大脳基底核疾患の1つであるジストニアは、持続性または反復性の筋収縮により、四肢および体幹の異常運動を示す神経疾患である。臨床例から大脳基底核の異常であると考えられているが、病態の解析を行うための適当なモデル動物が存在しないことから、正確な病態については不明であった。本研究ではジストニアの病態を解明することを目的として、ジストニアモデルマウスのニューロン活動を覚醒条件下で記録している。小児発症性の遺伝性ジストニアの1つであるドーパ反応性ジストニア(DYT5、瀬川病)は、テトラヒドロビオプテリン生合成の障害により、脳内のドーパミンが欠乏することが原因で発症する。本年度は、ドーパ反応性ジストニアのモデルマウスの神経活動を解析した。淡蒼球内節および外節において、バーストを伴う異常な活動パターンが観察された。また、大脳皮質の電気刺激が惹起する3相性の応答のうち、淡蒼球内節では抑制性応答の著しい減弱が、外節では抑制性応答の増強とそれに続く興奮性応答の著しい増強が観察され、これらの異常な応答がジストニア症状の出現に関与していることが示唆された。マウス個体からのニューロン活動の記録は、遺伝子レベルおよびスライスレベルの実験から得られた知見を行動と結びつけるために不可欠なものであるが、これまでほとんど実験例がなかった。本研究において、頭部固定状態のモデルマウスから覚醒下でニューロン活動を記録することにより、ジストニアの病態解明に迫るデータを得ることが出来た。今後、さらに非拘束運動中のマウスにおけるニューロン活動の解析を行うことにより、ジストニア症状発現のメカニズムを明らかにし、効果的な治療法を検索することが出来ると考えている。また、本研究で確立した実験系を用いることにより、多数存在する他の疾患マウスについても、同様に解析することが可能であるため、様々な疾患の病態解明に貢献出来ると考えている。
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Front.Syst.Neurosci.
巻: Vol.5