最近、これまで不明であった筋ジストロフィーニワトリの原因遺伝子が同定され、WWP1と呼ばれるHECT型E3ユビキチンリガーゼをコードすることが示された。このWWP1には1つのアミノ酸置換があり、優性遺伝形式をとるため、ドミナントネガティブ効果によるWWP1機能の変化が筋症状を誘発している可能性がある。そこで我々はこの筋ジストロフィーの病態を分子レベルで明らかにするため、WWP1の遺伝子改変マウスを作製し解析することを計画した。変異型WWP1と筋変性との関係が明らかになれば未だ原因が不明の筋ジストロフィーに関して重要な情報が得られるものと期待される。 ・平成21年度は筋ジストロフィーニワトリで発見されたWWP1の点突然変異をマウスWWP1 cDNAに導入し、これを発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。現在この導入遺伝子をゲノムに組み込んだC57BL/6マウス2系統を得て飼育繁殖を行っているが、1系統のみで導入遺伝子が子孫へ継代されることを確認した。これまでに得られたTgマウスに外見上の異常は認められないが4ヶ月齢の骨格筋に僅かな壊死・再生像が認められた。筋ジストロフィーニワトリの筋症状は軽症であることが知られており、Tgマウスで病態を再現する際には加齢との関連についても注意を払う必要がある。今後は加齢マウスの供給について検討する。 ・Tgマウス作製と同時にこれを解析するための抗体を作製した。特に変異型WWP1分子を特異的に認識する抗体の得る目的で、変異が認められる441番目のアミノ酸を含むペプチドをデザインして抗原とした。正常型及び変異型それぞれのペプチドを免疫して抗血清を得た後にアフィニティー精製を行ったが今後はこれら抗体の反応特異性について検証を行う。
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