研究概要 |
加齢したAEP KOマウスの骨髄では,形態を保った成熟赤血球を多数貪食したマクロファージやゴーシェ細胞様に不完全な分解産物を貯留したマクロファージが多数観察されるが,腹腔マクロファージを使用したin vitroでの赤血球貧食の顕著な貪食は見られず,分解遅延も観察されなかった。そこで骨髄細胞から分化因子によりマクロファージを誘導して得た骨髄由来の培養マクロファージを用いて,末梢赤血球の貪食及び貪食した赤血球の分解動態を解析した。その結果,骨髄細胞の由来するAEP遺伝子の遺伝子型によらず,骨髄誘導マクロファージは,オプソニン化赤血球を効率よく貧食した。さらに,貧食後の赤血球の分解動態にも異常は認められなかった。AEP欠損マウスの骨髄を由来とするマクロファージ単独での機能には異常がないことが示唆された。一方,骨髄から調整したRMを用いたマイクロアレイの解析から,AEP欠損マウスの骨髄では,加齢時にフォスファチジルセリンを介した貪食亢進を示唆する遺伝子発現の増加が示唆されたので,AEP欠損マウスの加齢個体における赤血球老化の異常について解析を進めた。加齢個体の抹消赤血球を栄養枯渇や加温等の老化促進のための負荷処理を行ったのちにフローサイトメトリにより赤血球表面抗原の状態を観察したところ,これまでの所大きな変化は認められていない。ファゴソーム形成に関わる分子の発現も骨髄で顕著に増加していることが分かったので,赤血球を貪食したマクロファージの出現が脾臓ではなく骨髄に限局していることと併せると,骨髄における赤血球造血過程に何らかの異常があることが予想された。
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