Y染色体以外の遺伝背景を同一にした17種類のY染色体コンソミック系統を利用し、代表的な量的形質に関し、Y染色体に量的形質遺伝子座(QTL)が存在するか否かを検証する。Y染色体にQTLが存在する場合、一塩基多型(SNP)に基づく関連解析により量的形質遺伝子を同定する。各Yコンソミック系統について、20~30匹程度の個体(合計455匹)について、80日齢時に、体重・精巣重量を測定した(455匹未満ではあるが、多くの個体については血漿中め総コレステロール・トリグリセリドを測定した)。DH-Chr YDHをコントロールとし、Dunnettの多重比較により体重・精巣重量・(体重に対する)相対精巣重量を比較した結果、全ての形質においてY染色体の効果が認められた。すなわちY染色体にこれら形質を支配するQTLが存在することが明らかとなった。DH-Chr YDHを除いた16系統について、Y染色体遺伝子コーディング領域のSNP情報をデータベース(Mouse Phenome Database)から得た。まず非同義アミノ酸置換をともなうSNPをこれら系統において(直接シークエンスにより)決定し、続いて、同義置換をともなうSNPのうち幾つかを決定した。これまで30個程度のSNPおよび幾つかのcDNA塩基配列を決定した。各多型塩基について、マウス系統は二群に分類された(すなわち系統に関係なくデータをプールする)。形質値を正規化した後、両群間で各形質の平均値に差があるか否かの検定を行った。統計的有意性の検定に関しては、Bonferroniの補正を行い、有意水準を設定した。結果的に、体重に関しては有意に連鎖するSNPは同定できなかったが、精巣重量・相対精巣重量に関しては複数の有意に連鎖するSNPを得た。従ってY染色体上の、これら形質を支配する遺伝子が明らかとされた。
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