研究概要 |
腱・靭帯由来の線維芽細胞に関するメカニカルストレスと細胞機能の関係についての報告は、いずれも2次元の培養環境で単一方向へメカニカルストレスを加え評価されたものであり、実際の生体内環境を模倣するには至っていない。生体内の腱・靭帯には3次元の組織に長軸方向のみならず、回転方向にもストレスが加わっている。本研究では腱・靱帯の線維芽細胞におけるメカニカルストレスの効果を3次元培養環境下で様々な複合的な機械刺激の下で分子生物学的な解明を通して行い、運動器疾患の治療に結びつけていくことを目的とした。まず3次元ストレッチ装置を作成し器官培養系を確立した。具体的にはキトサン・ヒアルロン酸ハイブリッド繊維に腱由来の線維芽培養を播種し、2週間静地培養したものをコントロールとし、細胞を播種後1週間静地培養の後、1週間メカニカルストレスを加え培養したものと比較検討した。メカニカルストレスは3次元基材を長軸方向に5%のstrainを負荷した群、90°rotationを負荷した群、両方向の負荷を同時に加えた群とした。それぞれ0.5Hzで16時間連続荷重負荷を加え、その後8時間静止させた。1週間後各群における細胞外基質産生能をReal-Time RT-PCR法を用いてCollagen Type I,III,Decolin,Fibromodulin,Biglycanについて検討した結果、コントロールと比較し、両方向同時負荷群ではCollagen Type I,III,FibromodulinのmRNAの発現が有意に高かった(p<0.001)。長軸方向負荷群、回転方向負荷群ではCollagen Type I,IIIの発現が有意に低かった(p<0.05)。さらに、培養器内で使用する3次元ストレッチ装置を作成し器官培養系を確立し、その効果を確認した。具体的にはキトサン・ヒアルロン酸ハイブリッド繊維に腱由来の線維芽培養を播種し、2週間静地培養したものをコントロールとし、細胞を播種後1週間静地培養の後、1週間メカニカルストレスを加え培養したものと比較検討した。メカニカルストレスは3次元基材を長軸方向に5%のstrainを負荷した群、90°rotationを負荷した群、両方向の負荷を同時に加えた群とした。それぞれ0.5Hzで16時間連続荷重負荷を加え、その後8時間静止させた。このサイクルを1週間継続した。各群における細胞外基質産生能をReal-Time RT-PCR法を用いてCollagen Type I,III,Decolin,Fibromodulin,Biglycanについて検討した結果、コントロールと比較し、両方向同時負荷群ではCollagen Type I,III,FibromodulinのmRNAの発現が有意に高かった(p<0.001)。長軸方向負荷群、回転方向負荷群ではCollagen Type I,IIIの発現が有意に低かった(p<0.05)。さらにDNAの定量を行った結果、両方向の負荷を同時に加えた群でDNA量が2次元でのメカニカルストレス群に比べ有意に多かった。また細胞増殖能の検討でも両方向の負荷を同時に加えた群で最も高かった。
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