低電圧におけるアポトーシス誘導閾値をもとめるため、様々な電圧(2-1500V)刺激を使ってアポトーシスの測定を行った。その結果、パルス波形(単極方形波、双極方形波)、パルスduration、パルス数を変化させることにより、過去15Vであったアポトーシス誘導電圧閾値が5Vにまで低減させることが可能となった。これらの実験過程で、500ms以上のdurationではパルス数が5回以下でもアポトーシスの誘導が可能であったものの、細胞ダメージが非常に強いことが分かった。今後低電圧におけるアポトーシス誘導閾値の検索には、パルスdurationとパルス数のふたつのパラメーターのうち、どちらが有為に影響を及ぼすのかの検討が必要である。さらに、波形が異なった低電圧パルスエレクトロポレーションによるアポトーシス誘導においても、アポトーシスの主要経路であるカスパーゼ(カスパーゼ3)の酵素活性の上昇が認められた。 一方、画像形態解析としては、アンギオテンシンを作用薬として細胞内カルシウム濃度変化を測定する実験系を確立することが出来た。その実験系を用いて、低電圧パルスエレクトロポレーション刺激を癌細胞に施行したところ、細胞内のカルシウム濃度が上昇することが分かり、癌細胞がアポトーシスに至る経路のひとつが明らかとなった。今後は、細胞内カルシウムの上昇のトリガーが何に起因するものかを探るため、低電圧パルスエレクトロポレーションによる細胞内小器官(細胞膜、小胞体、ミトコンドリア)への形態学的影響の検索が必要である。
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