研究課題
最終年度は、放射線以外の刺激に応答するプロモーターの取得とその遺伝子治療への可能性についての検討、さらには、刺激により発現を変化させるマイクロRNA(miR)を利用した人為的な遺伝子発現制御への応用について主に検討した。放射線に対して最も高い応答性を示した改良型プロモーターが、ドキソルビシンに応答して活性化することがわかった。活性化は、一定の範囲内で濃度依存的であり、酸化ストレスが関与していることが示された。そのプロモーターとドキソルビシンの組み合わせにより、自殺遺伝子であるfcy::fur(FF)遺伝子のin vitroでの発現制御とそれらを利用した自殺遺伝子治療に成功した。また、細胞内酸化ストレスを引き起こす1MHzの超音波により放射線応答性プロモーターを取得したプロモーターライブラレーのスクリーニングを行なった。その結果、応答性の高いプロモーターを2種類取得した。また放射線応答性を高めた改良型プロモーターも同等の応答性を示した。これらのプロモーターの利用により、FF遺伝子のin vitroでの超音波による発現制御と自殺遺伝子治療に成功した。超音波刺激に応答して発現が減少するmiRの標的配列と超音波により活性化するプロモーターとの組み合わせによる遺伝子発現制御の検討を行った。プロモーターと標的配列を組み合わせたものは、プロモーター単独よりも全体的に発現量が下がったが、発現増強倍率が1.5~2倍程度になっており、よりメリハリのある遺伝子発現制御が可能になった。FF遺伝子を用いたin vitro自殺遺伝子治療でも超音波の刺激がある場合とない場合の細胞死割合の差が大きくなった。このように、人工的に構築したプロモーター及びmiR標的配列を用いることで、物理的な刺激による遺伝子発現制御が可能となり、治療応用への可能性に結びつく結果を得ることができた。
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