研究概要 |
従来のホール素子を使うESR(電子スピン共鳴)の磁場制御では、磁場勾配をかけた時、正しい磁場を示さない。このために、電流検出型磁場制御を製造元である日本電子の協力のもとに、電流検出型磁場制御による磁場制御を行った。その結果、磁場勾配をかけた状態でも影響を受けずに設定磁場で試料を測定することが可能になった。 次に、円筒状に4点ある標準試料のファントム(模擬試料)を作製した。ファントムの標準試料としては、DPPH(2,2-Di(4-tert-octylpheny)-1-picrylhydrazyl))(4点、約1mm間隔と約2mm間隔)を用いた。はじめに、磁場勾配のない場合では、得られたESRスペクトルはシングルピークであった。次に、磁場勾配(9mT/cm)をかけた時は、4点の標準試料の信号に由来するピークを観測をすることができた。狭いピーク間が約1.0mm、やや広いピーク間が約2.0mm離れている場合の模擬試料を分離することができた。信号は4つに分かれたので、全体として、個々の信号強度は弱くなった。 また、これまでに研究開発したESRの手法を用いて、ヒト前腕内側部角層脂質の測定を行った。ESRに合わせて、TEWL(水分蒸散量)の測定も行い皮膚角層の構造状態を検討した。ESR測定とスペクトルシミュレーションの解析から構造性の指標であるオーダーパラメータ(S_0)を算出した。その結果、S_0の値は、二回目剥離で多少上昇する傾向にあった。スペクトル上で流動性成分の高いピークが、減少したことによると考えられた。また、TEWLの値も二回目剥離では、上昇する傾向にあった。TEWL値の上昇は、ESRの流動性成分の減少によるものと一致した。
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