本研究の目的は、末梢神経再生現象および関連する分子メカニズムを可視化することで、新たな再生評価法を検討することである。さらに、ステロイドホルモンの一つであるグルココルチコイドの神経再生における役割を解明することで、神経再生への新たな薬物治療としての応用を検討することである。はじめに、グルココルチコイドレセプター(GR)の末梢神経における発現動態を、蛍光共焦点レーザー顕微鏡を用いて免疫組織化学的に解析した。この結果、シュワン細胞にGRが発現しており、副腎摘出モデル(ADX)において、GRの免疫応答性を認めた。次に、内因性グルココルチコイドの末梢神経障害における役割を検討するため、末梢神経障害およびADX、グルココルチコイド投与(低用量、高容量)したモデルを作成し、シュワン細胞の重要な機能である髄鞘形成の効果を解析した。この結果、髄鞘タンパクMBP(myelin basic protein)のmRNAおよびタンパクの発現レベルがグルココルチコイドの濃度に依存して有意に変化し、形態学的評価においても、内因性グルココルチコイドの髄鞘形成効果を示す結果となった。今後も引き続き、グルココルチコイドの末梢神経障害における機能解析を行っていく。
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