研究概要 |
【目的】病理組織の画像解析において,これまでほとんど利用されることの無かった暗視野画像を利用することで,従来の明視野画像だけではできなかった新しい解析手法を実現すると共に,診断に有用な特徴量の算出法を実現する. 【研究成果】H22年度は、まず病理組織標本を暗視野で撮像した場合に偏光特性があるかどうかを検証した。その結果、予想どおり偏光特性があることを確認した。昨年度に実現したHE染色標本からの細胞膜の抽出処理に関しては、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を実現し、利用者が容易に細胞膜の抽出処理を行える機能を実現した。また、核の位置と輪郭を抽出する従来のシステムにGUIを組込み、N/C比(核/細胞質比)を算出できるシステムを実現した。 核の位置と輪郭の抽出処理に関しては、さらに暗視野画像を利用した抽出精度の改善を試みた。その結果、核位置の抽出に関しては明視野画像と暗視野画像の重み付き合成画像を利用することで精度を改善できることを明らかにした。位置抽出精度に関しては、修正率(修正の必要な位置の割合)を従来の16.9%から15.2%に改善できた。一方、輪郭抽出に関しては、輪郭の色が類似しているなどの特徴を新たに利用した上で核位置抽出と同様に暗視野画像との合成画像を利用することで、精度を改善できることを明らかにした。抽出された輪郭点の平均誤差が0.4画素以下の場合を抽出成功とみなした場合の抽出成功率は、従来の明視野だけの場合(83.3%)に比べて87.8%に改善できた。 即ち、核位置と輪郭抽出に関しても暗視野画像の利用が有用であることを明らかとした。
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