・前年度からの継続課題であった「パルスレーザー照射がラット海馬・錐体細胞のIhチャネル開閉を制御するかどうか」をパッチクランプ法を用いて検討し、以下の点を明らかにした。 (1)錐体細胞の細胞体に微小電極を用いてパッチクランプを行って過分極固定を行った場合、532nm・50mW(quasi-CW)レーザー照射中では膜電位が非照射時に比べて脱分極側へシフトすることが判明した。 (2)同様に脱分極固定を行って活動電位を発生させた場合、照射時では活動電位の立ち上がりが遅れることが観測された。 (3)過分極固定から開放されるときにoff-responseとしての活動電位発生が発生するが、非照射時に比べ照射時の方が群発パターンを示しながら頻発することが明らかとなった。 ・Kチャネルの開閉に基づき上記の現象を考察すると、レーザー照射によりKチャネル開口が活性化するという観点から(2)が説明できるが、(1)および(3)は説明できない。 ・Ihチャネルの開閉に基づき考察すると、レーザー照射によりIhチャネル開口が活性化するという観点から、陽イオン流入により(1)の脱分極シフトや(3)のoff-response発生が説明できるが、(2)は説明できない。 ・以上の考察から、レーザー照射はIhチャネルだけではなくKチャネルの活性化にも影響を与える可能性が考えられた。 ・現在、レーザー照射とともにKチャネル阻害剤のTEAやIhチャネル阻害剤のZD7288を併用して実験を行っている。平成23年度への継続課題として、レーザー照射効果のチャネル特異性や活性化・抑制化を含めて明らかにしていく予定である。さらに錐体細胞だけでなく、GABA系のインターニューロンでも同様の影響がみられるところから、GABA_AおよびGABA_B阻害剤の併用実験も検討する。
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