研究概要 |
本研究では形態や機能が互いに大きく異なる心臓と血管,腱・靭帯を取り上げ,力学的負荷によって引き起こされる組織リモデリングの現象を,摘出した臓器や組織を用いて,in vitroで実現する。この手法により,体内で組織に作用しているホルモンなどの種々の液性因子や神経活動の影響を完全に除外して,力学的な負荷がおよぼす効果のみを検討する。 本年度は組織培養装置の設計・作製を進めた。腱・靱帯を長期培養する装置では,細長く切り裂いた組織の両端をチャックで把持し,試験管内において片側に重りを取り付けて反対側を試験管に取り付けることにより,長期にわたって一定の力学的負荷を組織に与えられる装置を試作した。また,血管培養装置については血管内腔に培養液を一定の内圧と流量で循環することができる装置を試作した。設定した内圧と流量になるようにマスフローコントローラを使用し、2個のピエゾバルブの開度を自動制御する方法を使用した。今後は実験動物より摘出した腱・靱帯・血管の組織に力学的負荷を与えて培養し,培養中の力学条件が組織の力学的特性におよぼす影響を検討する予定である。 血管培養装置によりヘスペリジン(ビタミンP)の長期投与の効果を検討するための予備実験として,本年度では家兎に16週間ヘスペリジンを摂取させたときの大腿動脈の力学的特性の変化を検討した。その結果,大腿動脈の見かけの硬さ(スティフネスパラメータ)は変化せず,ノルエピネフリンによる血管収縮がヘスペリジンの投与により抑制されることがわかった。
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