研究概要 |
本研究では形態や機能が互いに大きく異なる心臓と血管,腱・靭帯を取り上げ,力学的負荷によって引き起こされる組織リモデリングの現象を,摘出した臓器や組織を用いて,in vitroで実現する。この手法により,体内で組織に作用しているホルモンなどの種々の液性因子や神経活動の影響を完全に除外して,力学的な負荷がおよぼす効果のみを検討することを目的とした。 本年度は昨年度に引き続き,組織培養装置の設計・作製を進めた。血管培養装置についてはマスフローコントローラとピエゾバルブを使用し、血管内腔に培養液を一定の内圧と流量で循環することができる装置を試作した。試作した培養装置の性能を検証し、100mmHgの内圧を誤差2%以内で、5mL/minの流量を誤差4%以内で、7日間維持できることがわかった。さらに家兎より摘出した総頸動脈を装置に取り付け、上記の一定流量・一定圧力の条件で、細菌によるコンタミネーションを起こさずに動脈内に培養液を7日間灌流し続けることができた。 年度初めの予定では当年度では腱・靱帯を長期培養する装置の改良を予定していなかったが,昨年度に試作した装置には不具合があることがわかったため,当年度において大幅に改良し,3種類の培養装置を新たに試作した。前年度の試作機に類似して重りを腱試料に取り付けて一定の力学的負荷を与えられる装置を2種類,力学的負荷を与えての培養中に力学的特性を測定できるように引張試験機に培養装置を取り付けた装置を1種類試作した。そして家兎膝蓋腱より切り出した0.3mm幅の試料13本の培養を前者2種類の試作機で3通りの力学的負荷条件で培養を試みたが,7本の試料が培養中に伸びて破断してしまい、培養に成功しなかった。後者の試作機での培養には至らなかった。 また、本年度予定していた糖転移ヘスペリジンの代謝物が大腿動脈の力学的特性におよぼす影響の検討については実施に至らなかった。
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