研究課題
本研究は、高い空間分解能での撮像が可能な高磁場MRI技術を用いて、細胞膜の電圧作動性Ca2+チャネル等を通過する機能性マンガン(Mn)造影剤を利用した「Mn増感によるMR細胞・分子イメージング」を実用化し、(1)高速定量画像法の開発による胎生期神経障害への適用、(2)Mn徐放剤の開発によるMnSOD過剰発現腫瘍への適用、および(3)Mn細胞標識法の最適化による移植細胞追跡という3つの研究分野に対して、その有用性と更なる拡張性を提示するものである。最終年度は、(1)神経変性疾患モデルでのMRI定量撮像法と動態解析および組織評価、(2)腫瘍モデルにおけるMn増感MRIの取得と定量的比較法の検討、(3)標識細胞の生体内追跡と機能性回復の評価法開発を行った。項目(1)に関しては、水頭症モデルにおいて、BBBの形成が完了しない生後1週間および完了した2週間でのMn造影剤の投与を行い、動的に高速T1定量計測を実施、神経細胞へのMn蓄積量を評価し、国際誌に発表した。さらに、高速灌流定量計測により非侵襲的に脳灌流量を計測、統計解析に必要な例数を実施、免疫組織染色と比較した結果を国際誌に報告した。また、Mn濃度の定量評価に関して、脳下垂体組織を対象に、動脈採血を実施し、血中のMn濃度をT1定量マップにより定量、3 compartment modelによる動態解析を実施し、組織間で比較することで実現、国際誌に発表した。項目(2)に関して、A)Mn-SOD過剰発現腫瘍と発現の少ない腫瘍を同一の実験動物に作成し、Mn造影剤の投与後に高速T1定量撮像を実施、Mn-SOD発現量とMn取り込みによる緩和時間短縮との相関を評価し、報告した。項目(3)に関しては、筋組織の虚血モデルに対して、Mnにより標識、最適化された免疫細胞を移植、MRI、SPECT、生体蛍光イメージングで可視化、追跡したものを画像解析し、国際誌に報告した。
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