1.第4元素としてRhの微量添加による変化を調べた。結晶粒微細化が認められたことから加工性向上が期待できたが、同時に硬さが減少したため、加工性改善手法としては不適切と考えられた。一方、Rh添加による磁化率の変化はわずかであった。 2.第4元素としてRhの微量添加による相構成の変化は認められず、溶体化は実現できなかった。 3.Au-Pt-8Nb合金を構成するα1相(Au側)とα2相(Pt側)の格子定数を調べた結果、α1相は全体のPt濃度(C(Pt))にあまり依存しなかったが、α2相はC(Pt)に負の依存性を示した。このことから、増加したPtはほとんどα2相に吸収されると考えられた。また、EDX分析の結果、α1相の組成はC(Pt)にあまり依存しなかったが、α2相ではC(Pt)増加にともないAu濃度が減少し、Pt濃度が増加していた。この組成を元に、両相の平均価電子数(e/a)を求めたところ、α1相ではC(Pt)増加にともないe/aが減少して1に近づいた。α2相でも同様に減少したが、両相のe/aを比較するとα2相の方が大きかった。 4.研磨した表面をSEM観察すると、α1相の方が優先研磨されていた、硬さと耐摩耗性は必ずしも一致する性質ではないが、組成が近似していることから、α1相の方が軟らかいと推定された。 5.以上より、C(Pt)増加にともないα1相のe/aが1、すなわちAuに近づいた結果、硬さもAuに近づいて軟化することで、合金全体が軟化したと推定された。この仮説が正しければ、この3元合金のC(Pt)増加にともなう軟化はスピノーダル分解により生じるα1相が原因であり、通常の熱処理では解消しないと考えられた。したがって、この3元合金でもっとも高い機械的特性を示すのはC(Pt)が低い合金、例えばAu-5Pt-8Nb合金と考えられた。
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