本年度はこれまで進めて来た研究をとりまとめInt.Arch.Allergy and Immunologyに掲載した。内容は一部報告したようにNiアレルギーの誘導初期にTh2型免疫反応が関与し、その後の反応ではTh1型免疫反応が主体をなしていることを示すと共に、Th2型免疫反応を優位に誘導するGATA-3トランスジェニックマウスを用いることによりアレルギー誘導能を初期段階で検索出来るシステムを構築することができた。 本年度は更に研究を進めNiにTiの含有比率を変化させた金属試験片を作製し、Ti含有率の異なる試験片のアレルギー誘導能について、検索したところそのTiの含有率の違いによりアレルギー反応が異なることが明らかにされた。Tiの含有率が50%に達するとその反応は著明に抑制されるが、それより以下ではTiの含有率に関係なく著明な耳介腫脹反応を示した。また、試験片移植マウス♀GATA-3Tgマウスと正常のマウスとの交配により生まれた仔マウスにNiに対する反応が受け継がれることも明らかになった。現在、Ni試験片移植雄マウスと正常の♀マウスとの交配とり生まれて来る仔マウスにNiに対する反応が受け継がているのかを検討中である。今後、この受け継がれが、胎児中に母方から受け継がれるものかもしくは母乳から受け継がれるのかを明らかにすることを目的に実験を計画している。また、Ni-Ti合金試験片を移植されたマウスの違いによりニッケルの溶出度がことなるかを調べる目的にで原子吸光法を用いて血清中のNiイオン濃度を測定したところ、GATA-3Tgマウス及び正常マウスと同様のWTマウスの血清中には同程度のNiイオン濃度が検出された。これらのことから、Ni-Ti合金試験片から溶出されるNiイオンの量はTh2型マウスでも正常のマウスと何ら違いはないことが明らかになった。
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