(1)人工関節軟骨としてのポリビニルアルコールゲル(PVA-H)に擬似体液由来アパタイト(SBF-HA)を被覆すると強い細胞接着性を発現することは既に実証した。本年度は、SBF-HAの細胞接着性をさらに向上させるため、SBF-HAの組成・結晶性を最適化する薄膜化方法を検索した。その結果、パルスレーザー法に比べスパッタリング法の方がより優れた機能性薄膜を部位選択的に被覆できることを明らかにした。また、Ti薄膜を下地被覆してからsBF-HAを被覆すると、Ti薄膜がSBF-HAの割れ発生を抑制することがわかった。 (2)PVA-Hの耐摩耗性の向上についても、継続研究として遂行した。合成用溶媒をDMS0から純水に転換して試行錯誤した結果、前年度開発した加熱プレス条件下で結晶化を促進したとき、摩擦係数はDMS0型に比べて15%低減できた。また、純水に転換しても力学的強度に変化はないことを確認した。 (3)H22年度の成果をもとに、エンジニアリングプラスチック(EP)をPVA-Hと生体骨の連結のための機械的アンカリング装置として導入する方針を打ち立てた。EPに骨様構造を与えかつ細胞接着性を確保する課題に取り組み、骨様構造を造形できる企業との共同研究契約を成立された。構造造形のための形状データを家免脛骨μCTデータから作成して、まず有限要素法によってその構造の剛性を理論計算して求めた。 一方、実験によっても剛性を測定した。形状データは共同研究企業へ送付して造形し、生体骨との力学的整合性を検討した。EPと生体骨では素材特性が異なるため、EPで骨構造を再現しても生体骨と同等の力学的特性は得られないことをふまえ、構造部材の幾何学的寸法を最適化して生体骨の力学的特性に整合させる方法を採用し、その有効性を確認した。 本年度当初に提出した本補助金交付申請書記載の計画に沿った活動を行えたと判断する。
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