再生医療用ナノブラシ固定化細胞培養基盤の調製と幹細胞保持並びに培養の基礎研究を行った。本年度は、特に、ナノブラシ固定化細胞培養基板の調製とキャラクタリゼーションを主に行った。具体的には、 A)ナノブラシ固定化細胞培養基板の調製: 親水-疎水-親水性セグメントよりなる親疎水三元共重合体として、ポリエチレンオシドーポリプロピレンオキシドーポリエチレンオキシドよりなるプルロニックを選択した。本研究で用いた様々なセグメント長並びに親疎水性比を有する親疎水三元共重合体(ナノブラシ)の組成比と分子量を検討した。プルロニック、ポリエチレンオシド並びにポリプロピレンオキシド(ナノブラシ)を細胞培養フラスコに固定化(ナノブラシ固定化細胞培養基板の調製)させることに成功した。 B)ナノブラシ固定化細胞培養基板のキャラクタリゼーション: 上記で調製したナノブラシ固定化細胞培養基板の表面分析を、マイクロBCA、赤外分光光度計(ATR法)、X線光電子分析装置を用いて行い、ナノブラシの定性分析並びにナノブラシ表面密度の定量を行った。さらに、上記で調製したナノブラシ固定化細胞培養基板の水に対する接触角を計測して、接触角の温度依存性を検討した。ナノブラシ表面密度の増加と共に、低温での接触角は著しく減少(親水性化)することを明らかとした。 C)ナノブラシ固定化細胞培養基板上での造血幹細胞保持並びに培養: セグメント鎖(分子量)並びに表面固定化量の異なるナノセグメントが固定化されたナノブラシ固定化細胞培養フラスコ中に臍帯血を挿入して、4度と20度並びに37度の各温度での臍帯血の保持を検討した。市販のバイオイナートデッシュと比べると、本研究で作成したナノブラシ固定化細胞培養基板は、造血幹細胞を長期に渡り保持することが可能であることが明らかとなった。
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