研究課題
基盤研究(C)
親水性セグメント-疎水性セグメント-親水性セグメントよりなる三元共重合体は、親水性ドメイン並びに疎水性ドメインを有する温度応答性高分子である。一般に、親疎水性ドメインを有する表面は、単に親水性の表面より生体適合性が優れていることが報告されている。しかしながら、表面基板の縦方向に親疎水性ドメインを有する生体適合性材料は、これまで研究されてこなかった。本申請研究は、様々なセグメント長(分子量)並びに様々な親疎水性量比を有する親疎水三元共重合体(プルロニック)を表面反応により細胞培養基板上に固定化することにより、ナノブラシ状親疎水三元共重合体固定化細胞培養基板(ナノブラシ固定化細胞培養基板)を調製した。いかなる分子設計の親疎水三元共重合体を用いてナノブラシ固定化細胞培養基板を調製するのが、造血幹細胞の保持・培養に適しているかを検討することが本申請研究の第1の目的とした。親疎水三元共重合体の温度応答性を利用して、ナノブラシ固定化細胞培養基板上に培養した細胞の剥離操作に、従来のトリプシン処理ではなく、細胞培養基板温度を低温にさせるのみで細胞剥離を効率良く行うことの実証と細胞剥離のための最適なナノブラシ固定化細胞培養基板の調製を第2の目的とした。親水性部位が70%有し、分子量が1万の三元共重合体を適度な密度で固定化させた基板上において、最も造血幹細胞の保持・培養に優れていた。高密度のナノブラシ固定化細胞培養基板上での造血幹細胞の保持・培養は、適しておらず、最適なナノブラシ固定化密度の存在が本研究で明らかとなった。様々な細胞外マトリックス(ジェラチン、コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、マトリゲル)をポリスチレン製基板上に共有結合並びにコーティング法にて固定化させた。いずれの基板上に間葉系幹細胞を培養しても、間葉系幹細胞の表面マーカーの発現率に、顕著な違いは見られなかった。ジェラチン並びにビトロネクチンをコーティングした細胞培養基板上では、骨芽細胞への分化は促進されたが、様々な細胞外マトリックスを共有結合で固定化させた基板上では、骨芽細胞への分化は促進されなかった。一方、様々な細胞外マトリックスを共有結合で固定化させた基板上では、神経細胞への分化が促進されていた。特に、マトリゲル固定化基板並びにラミニン固定化基板で顕著であった。さらに、プルロニックを細胞外マトリックスとともに固定化させた基板では、細胞培養液を4度に低下させることにより、間葉系幹細胞の細胞剥離を引き起こすことが可能であった。
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