研究概要 |
平成23年度は,前年度に考案した「磁束ベクトル推定技術」の実証実験に重点を置き,本手法の妥当性を検討し課題を洗い出すと共に,ロバスト性に優れた低侵襲的温熱療法システムの実現をめざした. 前年度までの研究により,ピックアップコイルを用いて磁束ベクトルを計測することで治療に適した温度に到達したことを検知できることを実験により実証している.しかしながら,体動により磁束ベクトルの計測精度が著しく低下することが課題として明らかになっていた.そこで,複数のピックアップコイルを組み合わせることで体動影響を低減する磁束ベクトル計測法を新たに考案し,理論的検討を進めてきた.そこで,本年度は昨年度までのアプローチをさらに進め,誘導加熱用コイル内部に埋め込んだ3個のピックアップコイルをロックインアンプでそれぞれ同期検波し,数cmの体動を想定した評価実験を実施した.その結果,直径2cm以内の体表面上の体動であれば十分低減できることを明らかにした(特許申請中).さらに,無電解メッキ技術によりAuコートした感温磁性体を用いて,渦電流損による発熱効率を向上できることを明らかにし,低い磁束密度での治療を可能にする技術を構築した.これらの知見を踏まえて,透磁率測定用プローブを備え,実時間で患部の到達温度をモニタリングしながら印加磁束密度を自動制御可能なソフトウェアを作成し,ロバスト性に優れた低侵襲的温熱療法システムを試作した.さらに,試作システムの評価プロセスを通して,新たな課題を顕在化することができ,この課題を解決する新たな方法論を考案した.
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