研究課題/領域番号 |
21500443
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松村 泰志 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90252642)
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研究分担者 |
武田 裕 大阪大学, 名誉教授 (20127252)
武田 理宏 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (70506493)
峯野 隆広 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30456983)
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キーワード | 診断支援システム / 知識ベース / 鑑別疾患リスト |
研究概要 |
本研究は、初期診断を支援するために、症状等から鑑別疾患リストを作成するシステムの開発を目的としている。診断支援システムは、従来法では専門医の知識に基づいて作成されていたが、知識の継続的な更新が難しかった。本研究では、教科書等から診断に有用な小さな粒度の知識を拾い出して登録し、システムで処理することにより診断する方法を考案し、実証することを目指した。昨年度までの研究成果により、ある症状が無い場合に特定の疾患を否定する論理を含めるべきであること、予め準備した言葉から選択方式で知識を登録することにより、言葉の揺らぎを抑制する方法が現実的であることが分かった。そこで今年度は、疾患名を約1万種ある病名マスターから選択し、教科書等からできるだけ全種類の症状を拾い出して整理し、そこから症状およびその属性について選択して登録する方式で知識を収集するシステムを構築し、疾患名、疾患コード、症状の種類、症状の属性、疾患のうちこの症状が出現する割合、この割合データの信頼度の情報を収集した。本システムを利用して、9人で分担し、教科書(今日の診断指針第6版、医学書院)から、疾患症状関係の知識を拾い出し登録した。教科書等には、疾患にある症状が出現する頻度は記載されていない場合が多く、記載されていても「多い」などの言葉で表現されている。この情報を数値化し信頼度を添えて登録した。また、各疾患の性、年齢層別の頻度の情報も、教科書に記載されていることはまれであるので、大阪大学医学部附属病院の病院情報システムに登録されている病名データを使い、各疾患の相対頻度を求めた。これらの数値から、特定の症状の有無の条件下での各疾患の確率をベイズの定理から算出し、確率の高いものから並べる方法とした。本構築システムを利用して、内科系の582疾患について、2366件の疾患・症状関係を登録した。このシステムにより、患者の一連の症状の有無情報に対して、概ね妥当な鑑別疾患リストが作成できることを確認した。本システムは、知識収集に専門医を必要とせず、教科書等から複数人が分担し並行して知識を収集することで診断精度を上げることができる点で実用化に有利な方法であることが確認できた。
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