近年、再生医療の発展により、細胞組織を体外で増殖し、損傷部位に移植し治療する方法が臨床応用され始めた。変形性関節症などの骨軟骨損傷にも、骨髄内の未分化間葉系細胞を誘導し修復を試み培養軟骨移植などが施行されている。しかし、実際の現場では、再生軟骨形態異常、移植組織の生着不全などが見られ、満足できる臨床成績ではない。この背景には治療部位の視覚的及び組織的評価が主体であり、関節機能動態に伴って変化する移植組織の強度(弾性)を評価していないことが問題であると考える。関節軟骨再生において生じる弾性差は、歪みや勢断を惹起し、変性を促進することは報告されている。 今年度の目的は、関節軟骨の硬度を測定するための新規プローブの開発とその機能評価である。軟部組織の強度の測定には硬度および張力を評価する必要がある。圧縮弾性率はこれらと相関関係にあると考えられ、一定の接触圧力を与えた状態から圧力を開放した時にどれだけの圧縮変位があったかを測定することによって、強度が測定可能である。これらをふまえた上で、小型で、汎用性の高い測定プローブを作成し、その臨床への応用を経済的な面も含めて検討する。 以下の項目について検討した。 1. 測定プローブ先端の作成 生体内での使用を目的としているため、安全性を最も重視し、プローブ先端部の素材選択またはその形状について検討した。また圧電機構部における微弱電流の影響を検討し、圧電機構部を作成した。(光石ら) 2. シャフト部形状及び素材 器具の一般化を目標とし、安全性は十分に確認した上で、小型化、軽量化、経済効果を考慮し素材および形状を検討した。(光石ら) 3. 励振条件の確認 動物モデルにおける生体構成体を用いることによって、測定に必要となるプローブ先端にかかる励振条件を確認した。(阿部・光石ら) 4. 測定材料剛性の確認 ヒト体内構成体を用いて構成体の硬度(弾性、張力)を計測した。既存の剛性試験機を用いて比較し、測定プローブの条件を検討している。(阿部・光石ら)
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