本研究において超音波の音響放射圧による細胞修飾効果を検証するためには、まず専用の実験装置を開発し、次いで無数にある実験条件の中から至適条件を決定し、実験系を確立しなければならない。これまでの研究により、細胞シートに対し最適と考えられる距離・方向で超音波を照射することが可能な実験装置を開発することができた。その後、至適条件を決定し、システムを確立するための研究過程では、超音波照射に伴う対象の細胞シートの温度上昇が予想外に大きいことが判明したため、冷却装置を追加・改良するとともに、特に照射する超音波の強さ、照射時間と照射間隔について様々な条件の組み合わせを試みて実験を行った。その結果、本装置における照射の安全域を決定することができた。しかし、ここで得られた安全域により実験を継続するためには、さらに資金を調達して照射装置において設定可能な各種条件を変更する必要があり、現段階ではそのための資金の調達を待っているところである。 この過程で得られた基礎的な実験データは本研究を行う上で必要なだけでなく、医用超音波の安全性、特に今後発展が期待される、培養細胞への照射に関する安全性についての貴重かつ重要な基礎的データと考えられた。そこで、これらを「生体に対する超音波照射の影響:組織照射モデルによるin vitroの検討」と題して第85回日本超音波医学会学術集会において発表した。
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