漏斗胸は胸郭の陥没変形を主症状とする先天性疾患であり、心肺機能を低下させるのみならず、劣等感の原因となり患者の情緒にも大きく影響するため、特に小児において治療の重要性が高い。近年、米国の小児外科医ナス氏により報告された手術法(以下、ナス法)は、簡便かつ少ない侵襲で胸郭の陥没を矯正することが可能なために、近年急速に普及しつつある。ナス法は優れた手術方法であるといえるが、症例によっては満足できる結果を得られない場合も存在する。どの症例はナス手術を行うことで効果が得られるのか、どの症例には思うような効果が得られないのかを術前に判別することは、治療計画を練る上で非常に重要なことである。ナス法の施行に伴い胸郭がどのように変形するのかを予測することができれば、この判別を行い、各患者に対して適切な手術計画を立てることかできる。本研究はこうした予測システムを構築することを目的とする。平成21年度においては構造解析ソフトの導入により、胸郭形態の理論的予測を行うことが可能になった。今後2年間においては、同システムの臨床応用を展開してゆく予定である。
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