研究課題
本研究は、漏斗胸に対する金属矯正バー挿入手術に伴い、胸郭が呈する形態変化を予測するシステムを確立することを目的として計画された。その具体的な研究実地計画として3項目を掲げた。すなわち(1)胸骨・肋骨・肋軟骨.靭帯の力学的特性を、物性値(Young率・Poisson比・断面2次モーメントなど)を用いて数値化すること(2)その物性値を用いて、実際の患者の胸郭について、形態のみならず力学的特性をも正確に反映するシミュレーションモデルの作成手法を完成すること(3)作成された胸郭シミュレーションモデルを実際の臨床に応用し、実用可能になるまで精度を向上することである。このうち先の2項目に関しては、3年計画の2年度まで(平成21年ならびに平成22年)に達成し得たので、平成23年度には第3の項目、すなわち予測システムの臨床実用化を目標として研究を施行した。この結果、成人例においてはほぼ正確に術後の胸郭形態が予測できるようになった。同成果に対して、日本形成外科学会の学術奨励賞(臨床部門)が与えられている。しかし小児に対しては、予測の精度が成人に比較して少し劣る。小児における胸骨の力学的挙動を正確にシミュレーションし、5-10歳の比較的若年の患者に対しても胸郭の術後形態を正確に予測するシステムの開発を今後の発展の課題としたい。なお本研究の当初の目的としては意図していなかったが、本研究の過程で発展させた技術が、他分野における臨床的問題の解決にもつながった。例えば生体を有限要素モデル化する技術を耳介形態の修正手術に応用すれば、先天性耳介変形症の患者に対して手術を行った場合にどのような形態をとりうるのかをある程度予測する事が出来る。さらに胸郭の形態変化を精密に評価する事を目的として開発した画像処理システムを用いて、日本人における頬骨形態の特徴を解明することにも成功した。これらの成果について英文雑誌に発表した(発表論文参照)。
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Plast Reconst Surg
巻: 128 ページ: 1127-1138
10.1097/PRS.0b013e31821eb58e
J Craniomaxillofacial Surg
巻: (印刷中)(in pressだがPubMedで閲覧可)
10.1016/j.jcms.2011.06.002
http://www.keio-prs.comr/routo/