研究概要 |
非関節性開口障害を呈する疾患の中に、咬筋が分厚く、顎角部が張り出した四角い顔貌を特徴としたスクエアマンディブル(SQM)がある。保存療法に難治性であり、その病態が明確でないことから、咬筋切除法、咬筋腱膜切除法、下顎角形成術、筋突起切除法など、咬筋あるいは、側頭筋に対する様々な術式が報告されており、治療法にコンセンサスが得られていないのが現状である。そこで今回,スクエア・シェイプド・マンディブル顔貌を呈する患者の咀嚼筋の病態モデルを構築し,さらには術前後のデーター解析から,その成因,病態についていわゆる医用工学の手法である四次元咀嚼筋解析システムを用いて解明することを目的とした。 4次元咀嚼筋群解析システムとは、患者のCT画像データから3次元再構成した頭蓋-下顎骨モデルに、下顎運動データを統合することによりリアルタイムに駆動する4次元顎運動システムを構成する。このシステムに咀嚼筋モデレレを加え、正常者およびSQM患者の下顎運動と咀嚼筋の動態を四次元的に観察するものである。生体においては咀嚼筋の活動により下顎骨が動かされているが、このシステムでは逆に、下顎骨の運動に合わせ筋肉モデルが伸縮することで、その筋運動異常が描出される。これにより、開口障害の原因と考えられる咀嚼筋運動異常部位を抽出することで、明確な根拠に基づく手術選択が可能となる。 当該年度は、健常者による本システムの構築と精度の確認が行われ、実際に、数名のスクエアマンディブル症例に適応することが可能であった。本システム結果に基づいた手術を適用することにより有用な結果が得ることが可能であった。今後、さらなる症例の蓄積とそのデーターの解析から、その成因、病態について解明を試みていく予定である。
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