研究概要 |
非関節性開口障害を呈する疾患であるスクエアマンディブル(咀嚼筋腱腱膜過形成症)は、咀嚼筋内の腱・腱膜過形成により開口障害を呈すると考えられているが、その病態、病因は不明で、治療方法にもコンセンサスが得られていないのが現状である。今回、本疾患に対して、いわゆる医用工学の手法である4次元咀嚼筋解析システムを用いて、その病態、病因の解明を試みてきた。本システムは、下顎運動と咀嚼筋の動態を四次元の仮想空間内で直接観察可能としたのものであり、最大開口時の各咀嚼筋の伸展状態を客観的に評価可能とした。今回は、本システムを実際の患者に適用し、開口制限の原因となっている咀嚼筋同定を行い、それに従い行われた手術結果と比較検討することにより、病態の成因解明、治療方法確立を試みた。 本システムの妥当性が健常者において確認された後、平成21年~23年の間、あるいはそれ以前に採得したデーターが適応できた症例は18名であった。全ての患者において、本システム結果に基づいた手術を適用することにより有用な結果が得ることが可能であった。具体的には、本疾患の開口制限はその特徴的な顔貌から咬筋の伸展障害が原因と考えられているが、実際の患者の最大開口時における各咀嚼筋の伸展率を比較検討したところ、咬筋より側頭筋の伸展障害が有意に低いことが判明した。そして、この結果に従った手術加療(筋突起切除術のみ)により、重篤な開口制限が全症例で改善された。以上より、本疾患の開口制限は側頭筋の伸展障害が主体をなすことが示唆された。このシステムの導入によって,根拠に基づく手術計画の立案と,的確で効率的な手術を行うことが可能であった。本システムは,従来の画像検査と異なり,各咀嚼筋の動態を視覚的にかつ客観的に評価することが可能で,その解析結果の妥当性は,本症例の手術結果に反映されたものと考えられた。 現在、本研究結果、成果について、各関連学会での報告は終了し、論文作成、投稿中である。
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