研究概要 |
本研究は,小脳性失調において,自発的外乱に先行して誘発される予測的姿勢制御の筋シナジーおよび筋シナジー間の協調性について明らかにすることを目的とした.我々は,初めて失調患者に対して非制御多面体仮説(筋シナジー間の協調性の定量化)を応用した.脊髄小脳失調症患者9名と健常者9名を対象とした.その結果,予測的姿勢制御の筋活動量を変量とする主成文分析の結果,第3主成文までの全分散値は両群に差がなかった.腹側筋と背側筋をペアーとした筋活動の相互相関係数の結果,患者群は膝関節と体幹の屈伸群において有意にTime lag(同時収縮性)が短かった.協調性の指標は,患者群は健常者群と比較して外乱前後において有意に低下していた.従って我々の結論は,軽度の小脳性失調患者は 1)フィードフォワード制御において筋シナジーを構築することができる,2)筋シナジーの活動パターンは健常者に比べてより同時収縮パターンである,3)筋シナジー間の協調性はフィードフォワード制御およびフィードバック制御ともに低下している. 研究成果は,国際学会(International Society for Posture and Gait Research,June 21-25,2009,Bologna,Italy)で発表し,原著となった(Asaka T,Wang Y.Exp Brain Res,2011). 本研究の成果は,神経難病疾患に対するリハビリテーション分野に光明を投じるものであり,異常姿勢制御の理解を深める上で意義がある.
|