研究概要 |
本研究は,床面水平外乱によって誘発された自動姿勢反応の学習効果について明らかにすることを目的とした.健常若年者9名を対象とした.三次元動作解析システムを用いて重心を算出し,10姿勢筋から筋活動を導出した.6日間に渡り床面水平刺激を,1人計540回実施した.重心動揺速度と新たに考案した7パターンの筋シナジーの筋活動量を訓練前後で比較した.その結果,訓練後の最大重心速度は,訓練3日目と比較して有意な減少がみられた.筋シナジー別にみた筋活動量は,不安定状態の後方刺激でKnee co-contractionとSway-forwardパターンで有意な増加がみられた.反復刺激によって安定性が向上し,不安定状態の重心前方動揺において特定の筋活動パターンの活動量増加が明らかとなった.中枢神経システムは,軽度の不安定状態においては膝の同時収縮パターンと股関節戦略に類似した活動パターンを練習によって強化することが示唆される. 研究成果は,国際学会(1st International Conference on Applied Bionics and Biomechanics ICABB-2010,October 14-16,2010,Venice,Italy)および国内学会(第45回日本理学療法学術大会,2010年5月27日~29日,岐阜)で発表し,原著となった(Asaka T, Yahata K, Mani H, Wang Y.J Motor Behav,2011). 床面からの水平動揺は,スリップやバスの発着時など日常で少なからず直面する。筋シナジーを視点とした本研究の成果は,階層制御理論の理解を深めると共に,バランス訓練効果の新たな指標および運動療法の開発に有用である.
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