研究課題
慢性腎不全において、適切な運動は腎保護効果や運動耐容能の改善など好影響をもたらすことが示唆されている。しかし、その効果はなお完壁なものではなく、効果を増強させる治療法が待たれている。そこで、非侵襲的再生医療への応用が期待されている顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)と長期的運動の併用による効果を検討した。7週齢のWKYラットを用いて、5/6腎摘除慢性腎不全モデルを作成し、以下の5群に分け12週間に渡り治療した。1)非治療群、2)運動群、3)G-CSF群、4)運動+G-CSF群、5)偽手術群。運動はラット用トレッドミル装置にて、速度20m/minの運動を1日1回60分間、1週間に5日間行った。G-CSF(5μg/kg)は連日皮下投与した。2週間ごとに24時間尿蛋白排泄量(UP)を、最終日に血清クレアチニン(Scr)、血液尿素窒素(BUN)を測定した。残存腎を摘出し、糸球体硬化指数(IGS)、筋線維芽細胞浸潤(α-SMA)、マクロファージ浸潤(ED-1)、糸球体上皮細胞脱落(WT-1)、相対的間質容積比(RIV)を評価した。偽手術群に比較して、非治療群のUP、Scr、BUN、IGS、α-SMA、ED-1、RIVは有意に高値を、WT-1は有意に低値を示した。非治療群に比較して、運動群ではIGS、ED-1、RIVは有意な低値を示した。G-CSF群ではUP、BUN、IGS、α-SMA、ED-1、RIVは有意な低値、WT-1は有意な高値を示した。運動+G-CSF群のUP、Scr、BUN、IGS、α-SMA、ED-1、RIVは有意な低値、WT-1は有意な高値を示した。運動群に比較して、運動+G-CSF群ではIGS、α-SMA、ED-1、RIV、WT-1の有意な改善を示した。これらのことから、慢性腎不全モデルラットにおいて、運動とG-CSFの単独療法による腎保護効果が示唆された。さらに、運動とG-CSFの併用療法は、腎保護効果を発揮しながら運動耐容能を改善させる可能性が示唆された。
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運動療法と物理療法
巻: 22 ページ: 78-84