研究概要 |
本年度は、加圧筋力トレーニングの安全性を検討するため、はじめに凝固系に対する急性の影響を検討した。若年健常人に対して、加圧の有無によるレッグプレス時のProthrombin fragment 1+2 (PTF)、thrombin-antithrombin III complex (TAT)、D-dimer、fibrin degradation product (FDP)の変化などを測定した。加圧により、こうした凝固系は明らかな影響を与えないことが確認され、加圧トレーニングの安全性が示された。 また、サルコペニアをきたす主要な原因としては、COPDだけでなく高齢もある。そこで、高齢者において、加圧下に歩行を行う「加圧ウォーク」が、QOL,筋力、静脈のコンプライアンスなどに及ぼす効果について検討した。対象は、60~78歳の高齢者で、加圧ウォーク群とコントロール群に分けた。加圧ウォーク群では、加圧下で、1日20分、67m/分、週5回、6週間のトレーニングを実施し、コントロール群では、加圧無しで同様のトレーニングを実施した。その結果、加圧トレーニング群では、有意な筋力の増加とともに、timed Up & Go及びchair stand testでの機能の向上を認めた。さらに、加圧ウォーグ群では、有意な静脈コンプライアンスの増加を認めた。これまで、高齢者では、筋量の減少とともに、動脈のみならず、静脈のコンプライアンスが低下することが知られている。これに対して、有酸素運動を実施しているものでは、改善することが報告されている。我々の検討から、加圧ウォークは、より効果的に筋力増強とともに、静脈コンプライアンスを改善する可能性が示唆された。今後、サルコペニアを有するCOPD患者に対して、下肢のレッグプレス、レッグエクスプレッション、レッグカールなどの筋力トレーニングのみならず、加圧ウォークも、より安全で効果的な筋力トレーニング法となる可能性が示唆され、今後、さらに、研究を継続する予定である。
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