本年度は、全身性強皮症で間質性肺炎のある患者93例の後方視的研究を行い、平成15年から20年までのデータをまとめた。また、対象患者の安静時基礎代謝の測定を開始し、当初次年度からの予定となっていた運動療法の実施についての学内倫理審査を受け承認された。そこで現在、運動療法を施行できる患者のデータを収集している。 後方視的研究の結果、間質性肺炎を有する場合には、体力の指標である6分間歩行距離は重回帰分析で、肺拡散能(70%未満)、肺高血圧症(推定右心圧35mmHg以上)、年齢がその関連因子としてあげられた。しかし肺高血圧症を伴わない場合、推定右心圧の代わりに、皮膚硬化の程度を示すスキンスコアや罹病期間が関連因子となることがわかった。また、全身性強皮症の治療薬投与により6分間歩行距離が有意に延長することを明らかにした。 これは、従来標準的な6分間歩行距離の関連因子が年齢、身長、体重とされ、計算式が存在していることに対し、全身性強皮症ではそれが当てはまらないという2007年のWanderの研究結果を支持するものである。さらに現在、全身性強皮症における6分間歩行距離の関連因子について有力な定説のない中で、今回全身性強皮症を2つの型に分けて新しい計算式を示したことは意義がある。 引き続き来年度は、対象症例に対して血中酸素飽和度に配慮した間欠的運動療法を施行し、介入前後での6分間歩行距離および抽出された関連因子、安静時基礎代謝量の変化を捉え、運動療法の有効性を検証する予定である。また、今回の結果を加えた内容の招待講演を6月と9月に行う予定となっている。
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